2007年04月10日

娘の話でも。 5/5 完結

 「ご乗車いただいておりますお客様には

大変なご迷惑をかけたことを深くお詫び申し上げます。

列車が止まってしまい、車内放送がつながらなくなったのは

こちらのミスでございます。本当に申しわけございません。

直ちに安全を確認して発車いたしますので

皆様、お席にお座りいただきますようお願い申し上げます」

 静かだった車内が、ザワザワとし始めた。

後ろの方で大声が飛ぶ。

「なんで止まったかを説明しろ!」

「そうだそうだ!」

 私達は今までとても感動の中に包まれていたため

現実をうまく飲み込めないでいた。

「そういや、そうだな」

 一番初めに現実に戻った商社マンがつぶやいた。

「理由を言ってくれないと納得の仕様がない」

 それもその通りだ。

謝られるだけというのは、おかしい。

「じゃあワシが訊いてくるさかい、ちょぅ待っとれ」

 私達が返事をする間もなく、花嫁の父が乗客の代表で

運転席まで原因を訊きに行ってしまった。

「あの人に言われたら、答えるしかないでしょうね」

 若い男性がいい、皆でハハと笑った。


 数分後。

原因を訊いて、彼が戻ってきた。

しかし様子が変だ。どこか照れているようだ。

「どうしたんですか?」

 私が尋ねると、彼はポリポリと頭をかいた。

「いやぁ、世の中のオヤジは娘に弱いもんやな」

 3人が首をかしげると、彼は小さな声で教えてくれた。

「運転手の娘が、朝に高熱だしたんやと。

それで気が気でなくて運転しとったけどアカンようなって

電車止めて、別の運転手と代わったけど

その別の運転手が新人で、車内アナウンスもよう使わん。

急遽、急いで他のヤツ呼ぼう思っても無線がわからん。

携帯取り出してもつながらへん。

運転席からも出られへん。言うたらアホやな。

そしたらベテランの方がショックで熱出てきて・・・」


 そこまで聞いて、皆でバカらしくなった。

でも笑いが止まらなくなった。

世の中の、オヤジはバカだ。娘バカなのだ。

そのバカたちが支えるこの国、なんて素晴らしいんだろう。



おわり
posted by マメイド at 12:14| Comment(4) | 娘の話でも。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

娘の話でも。 4/5

 その男性は私たちに立つように言い、座席から退かせて

グルリンと座席を反対側に向けた。

「4人おるんや、向かい合わせの方がええやろ」

 私達が唖然としていると、男性はドカッと座り

「ほら、お宅らも座りなはれ」

 顔に似合わず、気を遣う人なんだろうと思った。

サングラスから覗いた目が少し優しかった。

「さっきから聞いとったら、娘の話で盛りあがっとるようやな。

ワシも娘がおるんや。しかも明日が結婚式や。

せやのに電車止まるしな。ええ加減にせえってな」

 ガハハと彼は笑った。

「結婚ですか、それはよかったですね!」

「おめでとうございます!」

「明日が楽しみですね!」

 3人が口々にお祝いの言葉を述べた。

「おおきに。せやけど淋しいもんやで。

ワシが一人で育てた一人娘やからな。

せやけど、こんなワシに育てられたのに素直な子になってな。

家事も全部できるし、ほんまにええ子なんや。

結婚するのに何の心配もないんや、ただな・・」

 ひとつだけ不安があると言う。

それは自分なんだと。

自分がこんなナリで、こんな顔で、こんな声で

結婚式に行ったら、娘が恥ずかしいんじゃないかと。

「相手んとこは会うたことあるからええけど

会社の知り合いやら、友達やら、なんやらもワシを見るやろ。

そしたら娘のことなんて思うかな、思てな」

 彼はすっかりしょぼくれた様子で話を止めた。

皆、黙りこくった。

きっとそれぞれがいろんなことを考えていたんだろう。

 その沈黙を破ったのは、またこの男だった。

「そうは言っても、結婚式に呼ばれたんですよね?」

 若い男性立ち上がって元気に言った。

「まぁ、せやけど・・」

「そうなら、心配ないじゃないですか。

娘さんが来てほしいって言ってるなら、関係ないじゃないですか。

それに一人で育てたなんて、すごく立派です。

僕にはきっと真似できません」

 次に商社マンが立って

「そうですよ。それに娘さんの結婚式です。

娘さんのことを慕う人がお祝いに来るなら

あなたのことをそんな目で見たりしませんよ。

大丈夫です、大丈夫ですよ」

 最後に私が立って

「娘さんのお父さんは、あなただけなんですから」

 そう言ったときだった。

サングラスの奥から涙がこぼれた。

「おおきになぁ、みなさん。

はじめて会うのにこんなに親身になってもろて

ワシは幸せもんやな」

 彼はボロボロ涙を流しながら、お礼を言った。

 よし、と私が決め台詞に、涙は明日にとっておきましょうよ

と言おうとした時

「ご乗車の皆様!報告が送れて申し訳ありません」

 電車が止まって30分、やっと車内アナウンスが響いた。

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2007年04月09日

娘の話でも。 3/5

 若い男性は、結婚したばかりだと言う。

「でも、もう妻のお腹には子どもがいて。

あ、いわゆる、できちゃったというやつです」

 ハハハと少し恥ずかしそうに語った彼に

私の隣の男性が、こう告げた。

「できちゃったというと、子どもが傷つきますから

おめでた婚と呼ぶのはどうでしょう」

 なるほど、と若い男性は感心して

「あと3ヶ月くらいで産まれるんです。女の子だって」

男前の顔がゆるんだ。

 そして彼は、通路を挟んで向かい側、つまり私の元の席に

腰を掛け、身元を名乗った。


「実は、僕は普通のサラリーなんですけど

今日、有給をとって実家で出産準備してる妻に

会いに行こうと思ってたんです」

 なのに電車は止まるし、電話はつながらないしで

困っていると言う。

「公衆電話がなくなって不便だと思うのはこれですね」

 そういえばこの新幹線には公衆電話がなかった。

不便な時代はどんどん加速するようだ。

若い人もそう思っているのに、いったい誰がこういうことを

率先してやっているんだろう。

「娘が大きくなる頃には、どんな時代なんでしょうね」

 私の隣の商社マンがポツリと言った。

みんなが黙ってしまった。

 数分後、沈黙を取っ払うように、変なバイブ音と

明るい声がした。

「あっ、妻からメールが来ました。

おっなぜか電波が入ってる!

元気だそうです。これ、お腹の中の写真だそうです」

 彼は興奮したようにケータイの写真を見せてくれた。

「これが頭じゃないでしょうか。ほら」

 商社マンが言い

「これが手ですよ、ほら握っている」

 私が言った。

 そして3人で顔を見合わせ、時代は流れてるんですね、と

ハハハと笑った。

 その時、また後ろから声がする。

振り向くと、見るからにケンカっ早そうな私と同じ歳ぐらいの

男性が立っていた。

「ワシも話に寄してくれんか」



 
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2007年04月06日

娘の話でも。 2/5

 まず声をかけてみたのが

通路を挟んで向こう側に座っている男性だ。

小柄だが、きっと私と同じくらいの歳で

スーツを着ているから、職も似たようなものだろう。

「止まってしまいましたね」

 私がそういうと、彼は本当に、と言ってハハハと笑い

「どうぞおかけください」

 隣の席においていた鞄を退け、私が座れるようにしてくれた。

なんだかとても嬉しく、じゃあ、と言って腰を下ろした。

 彼は商社マンだといった。

やはり私と同じく出張に行こうとしていたところだったという。

「そんなに急いではいないんですが、いつ直るかわからないと

やはり困りものですな」

 またハハハと笑って、頭を押さえる仕草から、

人の良さがにじみ出ている。

「つかぬことをお聞きしますが、娘さんはいらっしゃいますか?」

 突然、彼からこんな質問が飛んできた。

「ええ、2人いますよ。もう20を超えて出て行きましたが」

 私がそういうと、彼はいきなり座席を立って、何かを叫んだ後

落ち着いてもう一度座り

「やはり、そうなんですね・・」

と肩を落として言った。

「実は、晩婚なもので、次の春に小学生になる娘がいるんです。

でも最近なんだか反抗期のようで参りまして・・。

しかもあと十数年もたてば出て行くということですから

なんだかもの悲しくなってしまって・・すいません」

 彼は少し目に涙を見せた。

そういえば私も昔はこんなことで悩んだ事があった。

しかし今になってみれば、出て行けば、また孫を連れて

帰ってくるんじゃないかという期待もできて

返って楽しくなるような気もする。

 ということを彼に伝えようか迷ったが

父親としてまだまだ駆け出しの彼は、悩んだ方がいい。

悩んで、娘の成長と共に自分を成長させるのだ。

それが、子育ての醍醐味だろう。

 私がそんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。

「僕も混ぜてもらえませんか?退屈で退屈で・・」

 振り返るとまだスーツ姿にキレがある若い男性で

容姿も男前の、いうならばジャニーズ系だった。
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2007年04月04日

娘の話でも。 1/5

 最悪だ。どうしてこんなことに。

なぜ、今日なんだ。なぜ、この時間なんだ。

とんだ迷惑だ。なぜなんだ。

突然新幹線が止まるなんて、最悪だ。

 なんぜ止まったかもアナウンスしないのか、この電車は。

いつごろ直るかもわからないのか。

私は忙しいんだ。

今から出張で名古屋までいかなくてはいけないのだ。

止まっている場合じゃないぞ、新幹線。

 ほら、動け。

なんとしても動け。

停電ではないだろう。電灯も冷房もついているし。
 
 まったく、本当に運が悪い。

もう1つ前か後にすればこんなことにはならなかったのに。

・・まぁそんな後悔はしたって仕方ない。

私以外にも同じ気持ちの人がいるはずだ。

 周りを見てみると早朝だからか、客が少ない。

そのわりには、私と同じ歳くらいの人が多いな。

団塊の世代には及ばないほどの、おじさんの年齢だ。

 なんとなく暇だ。声をかけてみようか。

私はこう見えても社交的なんだ。
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プラスマイナス 7/7 完結

 最悪のタイミングで疾風のように現れたアイツは

彼女をみるなり、にやりと言った。

「噂どおりかわいいな!」

「ふふふ」

 彼女は照れたのか、複雑な気持ちなのかわからないが

笑っていた。

 お願いだから歳は聞かないでくれよ、と思ったときだった。

「彼女、どこの高校?」

 あぁ、もうダメだと思った。

僕のなけなしのプライドなんて、どうだっていい。

ただ彼女が傷つくかもしれない。そんな気がした。

 ・・・ポン。

僕がいろいろ考えていると、突然頭を優しく叩かれた。

彼女の手だった。

顔を覗くと、任せろと言わんばかりであった。

「あたしは、そこの女子高。見えるでしょ?」

 そしてこっそり、僕にだけ聞こえる声で

「通ってたんだもん。ホントでしょ」

と言って笑った。

「そうなんだ。また遊びに行くよ、ハハ。

じゃ、俺これからバイトだから行くわ。またなっ」

 アイツが公園から出て行こうとする。

彼女は隣で笑って手を振っている。

これでいいのか、僕。

彼女にうそをつかせてまで、守りたいものって何だ。

違う、違う、守るとかじゃなくて

僕は彼女がすきだから、堂々とすべきなんだ。

「ちょっと待ってくれっ」

 アイツが止まって振り向いて、なんだ?と言う顔をした。

 自分の拳を握り締めた。少し震えてるけど。

息を大きくすって、大声で叫んだ。

「彼女は25歳で、僕より9つ上だっ」

 あんぐり口を開けたのは彼女だった。

「言っちゃっていいの?」

「いいの」

 当のアイツはと言うと、喜んだように走ってきて

「お前すげーな!すげーな!ってか彼女マジでかわいーな!」

と言い残し、惜しみながらバイトへ行った。

 
 公園に夕日が沈む。

ブランコに二人で座っていると、彼女が口を開いた。

「さっき、聞いたでしょ。なんでOKしたのかって」

「うん」

「ウソつかないような、ってかつけないような顔してるから

好きだなって思っちゃったんだな。

そしたらホントにそうだったからさ」

 彼女はそう言って、僕の頬に・・・

まぁこの話はここまで。

 とにかく僕が言いたかったのは

愛に歳の差なんてないってこと。

だってすきなのは、相手の歳でも格好でもなく

中にある大切なココロなんだと思うから。



おわり。

posted by マメイド at 09:56| Comment(0) | +− | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月03日

プラスマイナス 6/7

 着いたところは公園だった。

それも、僕の家のすぐ近くの。

「ここ知ってる?」

 彼女は僕の腕を離して、ベンチに座った。

「知ってます、知ってます。よく昔遊んでた」

 僕がそういうと、彼女はすくっと立って

「やっぱり!」

と手をパチンを合わせた。

 何を言われてるのかよくわからなくて、呆然と

公園をグルグル回る彼女を見つめていたら

突然、砂場のところで大きく手を振って、来いと合図をしてきた。

 走っていくと、砂場の端を指差して

「ここ!はじめてあったとこ」

と彼女は笑って言った。

 僕が???な顔をしていると、ごめんごめんと言って

彼女が話し始めた。

「わたし高校生のときに、助けられたのよ」

「僕に?」

「そうそう、まだ小学生だったから覚えてないかもね。

すごくおなかの痛い日でね。高校から急いで帰ろうとしてたの。

でも途中でホントに痛くなっちゃって、砂場が布団に見えてね

倒れこんだのよ、ハハハ」

 彼女は照れたように笑った。

「そのときに、君が通りすがって、あたしのこと見て

びっくりしたらしくランドセル投げ飛ばして走ってきたの。

大丈夫かー姉ちゃん!って。

かっこよかったよ。1年生ぐらいだったのに」

 僕は顔が真っ赤になっていくのがわかった。

「全然覚えてない・・です」

「そりゃそうよね。もうほんと8年ぐらい前の話。

それで、大人呼んできてくれてさ、高校に連れてってくれて

あたしは元気になって、ここにいます」

 砂場の砂を手にすくってサラサラと落としながら彼女は言った。

僕もしゃがみこんで、同じことをしてみた。

そして考えた。これが、OKしてくれた理由なのか?

なんだか複雑な気持ちになった。

「じゃあ、僕と付き合ってくれてるのは、もしかして

あの頃の僕への恩返しなんですか?」

「それは違うよ」

 ドキドキしながら聞いたのに、あっさり返されてしまった。

「あたしだってずっと覚えてたわけじゃないのよ?ただ

どっかで見たことあるなとは思ってたけど。

告白された後で、あのときの子だって気が付いたの。

OKした後よ」

「じゃあなんで・・」

 この際だから聞いてしまえばいいんだ。

ずっと気になってるんだから。

「それはね・・」
 
 彼女がそう言ったときだった。

その大事な大事な言葉をかき消すように、大きな声で

後ろから僕を呼ぶ声がする。

 立ってふりむくとそこには、アイツがいた。

昨日メールが来たアイツだ。

 やばい。本当に彼女といるところを見られてしまった。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。

もうすぐ終わりだってのに、こりゃないぜ。

次回、最終話です。
posted by マメイド at 11:24| Comment(0) | +− | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月01日

プラスマイナス 5/7

 こんなのでいいのか?

大丈夫か?やっぱり違うのにしようか。

靴はちょっと大きいけど、やっぱこれで。

うん、ほとんど兄ちゃんの借り物だけど、いいか。

25歳と釣り合う為には僕の服じゃダメだもんな。

「まだ1時間もある」

 僕の家から、待ち合わせのパン屋までは普通に歩いても15分だ。

男として早く行き過ぎるのも嫌だし、待たせるのも嫌だ。

「どうしようか・・でも深読みしてもいいことないよな!」

 僕は部屋を飛び出した。

だって、早く会いたいから。

年上とか関係なく、彼女が好きだから。

歳を知らなくて告白したのは、逆に良かったと思うから。

やっぱり、好きだから。

 待ち合わせ場所に着いたけど、45分前。

やっぱり彼女はまだ来てなくて

僕は定休日のパン屋の前に座って待つ事にした。
  
 丁度、10時になった時、ポンポンと肩をたたかれて振り向くと

とてもかわいい女の子が、(ほんとは女の人だけど)居て

一瞬誰かと思ったけど、彼女だった。

「私服見るの初めてだけど、かっこいいねぇ」

 にっこり笑って僕の服のすそを少し引っ張った。

とろけるかと思った。

「いや、これ、実は兄貴のなんすけど」

 僕が照れて訂正したら
 
「あたしも妹の服借りてきた。初デートで姉弟と思われたら

やだもんねぇ〜」

とクスクス笑って、さぁ行こっかと言った。

 妹が居るんだ、なんてほんわか考えていると、彼女が僕の腕を

がしっとつかんで(これを腕を組むと言うのかな)

どんどんすすんでいく。

 そういや、今日はどこに行くかも聞いてない。

「どこいくの?!」

 すると彼女は振り向いて

「ふふふ、付いてきて」

 不適で無敵な笑顔だった。

どうしよう、僕はやっぱり騙されてるのかもしれない。

彼女に、連れて行かれます。どこかへ。
posted by マメイド at 12:20| Comment(0) | +− | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月23日

プラスマイナス 4/7

 倒れている僕のそばで、もう一度携帯が鳴った。

「うわっ、また!?」

と思ったら、メールだった。友達からだ。

携帯にビビッているなんて、どうやら僕は相当参っているらしい。

「なに?告白はどうなったかって?・・あ」

 そういえば、僕はこいつに宣言したんだった。

今日、好きな子に告白するって。

「どうしよう・・・・」

 まさか9つも年上だったなんて、言えない。

こんなに好きだった女の子の年も見抜けないなんて

僕のなけなしのプライドが許さない。

「どうしよう・・フラれたことにするか?」

 でも、待てよ。もし明日2人でいるところを見られたら・・。

しょうがない、この際、歳のことは隠しておこう。

 とりあえず、『OKもらった!』とだけ返信した。

すると、『よかったな!で、どこの高校なんだ?』と返ってきた。

 そうだよな、僕だって気になってたんだから気になるよな。

嘘をつくのは悪いと思ったけど『まだそこまで聞けてない』と返した。

 まったく、僕はなにをしているんだろう。

どうしたらいいんだろう。

 自暴自棄に陥っていると、またメールが返ってきた。

『今度会わせてくれな!』

 ・・・ほんとにどうしたらいいんだろう。

あ、そうだ、もう一度言いますが、明日はデートです。

眠れるだろうか。
posted by マメイド at 02:01| Comment(0) | +− | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

プラスマイナス 3/7

 アドレス帳を開いて、彼女の番号にかけようとした、その時

突然、携帯が鳴った。

「うわっ」

 タイミングがいいのか悪いのか、彼女からだった。

ドキドキしながら受話ボタンを押した。

「も、もしもし・・?」

「あっ、もしもーし!どうも」

「あ、ど、どうも」

 完全に僕は緊張している。

「さっきはびっくりしたよ。フラフラ帰っちゃうんだもん」

 彼女はアハハと笑って言った。

「す、すいません」

「いや、いいのいいの。っていうか、もう彼氏なんだから

年上だけど敬語とか使わないでよ」

「か、彼氏!」

 やっぱり僕は彼女と付き合えることになってる。

「そうだよ。でね、明日デートしないかなって思って」

「デート!?」

 心臓が飛び出るかと思った。デートなんか、したことがない。

でもよく考えたら付き合うってことはデートするってことなんだ。

僕は、そうしたかったはずなんだ。

ホントは同い年くらいの子とだったけど。

 いや、この際そんなこと言ってる場合じゃないんだ。

僕は男になったんだから。

「明日ダメ?あたし仕事休みなの」

「い、いいっすよ、日曜だし!」

 僕がそういうと、彼女は、かわいい声ではしゃいで

「わぁ、よかった。じゃぁ明日パン屋の前に10時でいい?」

 と言った。完全にペースを握られてる。

僕はオロオロしながら答えた。

「わかりました」

「じゃあまた明日ねー!」

 プチッと電話が切れて、僕はドッと床に倒れこんだ。

緊張と、恋心と、不安が、頭の中をぐるぐる回ってる。

 明日は、デートです。
posted by マメイド at 01:48| Comment(0) | +− | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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