大変なご迷惑をかけたことを深くお詫び申し上げます。
列車が止まってしまい、車内放送がつながらなくなったのは
こちらのミスでございます。本当に申しわけございません。
直ちに安全を確認して発車いたしますので
皆様、お席にお座りいただきますようお願い申し上げます」
静かだった車内が、ザワザワとし始めた。
後ろの方で大声が飛ぶ。
「なんで止まったかを説明しろ!」
「そうだそうだ!」
私達は今までとても感動の中に包まれていたため
現実をうまく飲み込めないでいた。
「そういや、そうだな」
一番初めに現実に戻った商社マンがつぶやいた。
「理由を言ってくれないと納得の仕様がない」
それもその通りだ。
謝られるだけというのは、おかしい。
「じゃあワシが訊いてくるさかい、ちょぅ待っとれ」
私達が返事をする間もなく、花嫁の父が乗客の代表で
運転席まで原因を訊きに行ってしまった。
「あの人に言われたら、答えるしかないでしょうね」
若い男性がいい、皆でハハと笑った。
数分後。
原因を訊いて、彼が戻ってきた。
しかし様子が変だ。どこか照れているようだ。
「どうしたんですか?」
私が尋ねると、彼はポリポリと頭をかいた。
「いやぁ、世の中のオヤジは娘に弱いもんやな」
3人が首をかしげると、彼は小さな声で教えてくれた。
「運転手の娘が、朝に高熱だしたんやと。
それで気が気でなくて運転しとったけどアカンようなって
電車止めて、別の運転手と代わったけど
その別の運転手が新人で、車内アナウンスもよう使わん。
急遽、急いで他のヤツ呼ぼう思っても無線がわからん。
携帯取り出してもつながらへん。
運転席からも出られへん。言うたらアホやな。
そしたらベテランの方がショックで熱出てきて・・・」
そこまで聞いて、皆でバカらしくなった。
でも笑いが止まらなくなった。
世の中の、オヤジはバカだ。娘バカなのだ。
そのバカたちが支えるこの国、なんて素晴らしいんだろう。
おわり
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